乾癬性関節炎
進行性の疾患もしっかりとした治療で
症状をかなり改善することができます。
乾癬性関節炎は皮膚または爪に乾癬がある人の一部で発生する脊椎関節炎の一つです。
この病気にかかった家族がいる方はリスクが高いと言われます。
リウマチに症状が似ており、気になる方は早めの診察をおすすめいたします。
乾癬(かんせん)ってどんな病気?
乾癬は皮疹(ひしん)を伴う慢性の皮膚の病気であり、特徴的な皮疹の形や分布などから比較的容易に診断できます。
乾癬と区別しにくい症状がある場合は、皮疹の一部をメスで切り取って顕微鏡で調べる検査(皮膚生検)を行います。
乾癬にはいくつかの種類があり、それぞれで症状の現れ方は異なります。
最も一般的なタイプは尋常性乾癬(じんじょうせいかんせん)と呼ばれ※、乾癬全体の約9割を占めています。
※「尋常性」とは普通にみられ、ありふれていることを意味します。
- ●現在、日本の乾癬患者さんは約50~60万人(人口の約0.4~0.5%)と推計されています。欧米(人口の2~3%)に比べると少ないですが、近年は生活習慣の変化などさまざまな要因から、日本でも患者さんの数が増加しています。
- ●日本における男女比は2:1と、男性の方が多くみられます。発症年齢は思春期から中年以降と幅広いですが、男性では50歳代、女性では20歳代と50歳代が多いとされています。
乾癬性関節炎(かんせんせいかんせつえん)ってどんな病気?(乾癬全体の約3~10%)
関節症性乾癬といわれることもあります。関節リウマチのように関節が腫れたり、痛んだり、ときに関節の変形をきたすこともありますが、関節リウマチではありません。関節の腫れは、手や足の指の第一関節に多く見られます。乾癬だからといって、乾癬性関節炎を必ずしも発症するわけではなく、また乾癬の皮疹がひどいからといって関節症状がひどくなるわけでもありません。
多くの場合、乾癬の皮疹が出た後に関節の症状が現れてきますが、それは皮疹が出てから数ヵ月後のこともあれば、十数年後のこともあります。乾癬の患者さんで関節痛のある場合、なかでも指の関節に乾癬の症状がある場合や乾癬の爪病変もある場合は、乾癬性関節炎の可能性が高いといえます。日本では、近年、乾癬性関節炎と診断される患者さんが少しずつ増えており、乾癬全体の3~10%程度を占めています。
癬による関節の腫れや痛みは?
皮膚症状に加えて、関節に腫れや痛みを伴う場合は乾癬性関節炎(関節症性乾癬)が疑われます。
患者さんによって症状や発現時期も異なり、乾癬の皮膚症状の後に関節症状が現れる場合が多いですが、
皮膚症状と関節症状が同時に現れたり、関節症状が先に現れたりする場合もあります。
乾癬性関節炎(関節症性乾癬)の主な症状
付着部炎(ふちゃくぶえん)
指趾炎(ししえん)
末梢関節炎(まっしょうかんせつえん)
体軸関節炎(たいじくかんせつえん)
乾癬性関節炎(関節症性乾癬)のチェックリスト1)
次の15の質問について、ひとつでも思い当たる点があるようでしたら、関節の症状について主治医にご相談ください。
1) Dominguez, P.L., et al.: Arch Dermatol Res. 301(8):573, 2009.より作成
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[症状に関して]
- ほぼ1日中、疲れを感じている。
- 関節が痛むことがある。
- 背中が痛むことがある。
- 関節が腫れている。
- 関節が熱をもつことがある。
- 手足の指がソーセージのように腫れている。
- 関節の痛みが他の関節に移ることがある。
(例:手首の痛みが数日続いた後、膝が痛くなるなど)
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[関節の機能に関して]
- 関節の症状が、仕事に影響を及ぼしている。
- 関節の症状が、身の周りの動作に影響を及ぼしている。(例:着替えや歯磨きなど)
- 時計や指輪を身につけるのに苦労する。
- 車の乗り降りに困難を感じることがある。
- 以前は出来ていた動作ができない。
- 朝起きてから2時間以上、関節のこわばりを感じる。
- 朝が最もつらい時間である。
- 時間帯に関係なく、普通に動けるようになるまで数分かかることがある。
乾癬性関節炎の治療 ~生物学的製剤について~
生物学的製剤は、体の免疫機能にかかわるサイトカインに働きかける薬です。
生物学的製剤について
生物学的製剤は、生物が作り出すタンパク質をもとに作られた薬で、皮下注射や点滴で投与され、体の免疫機能などに関わる物質である「サイトカイン」の働きを弱める薬です。
乾癬とサイトカインについて
サイトカインの作用の一つは、細胞から細胞へ情報を伝達することです。わたしたちの体は、数十兆個におよぶ細胞からできており、絶えず増殖や消滅などを繰り返しています。その変化に必要な増殖などの指令を細胞間で伝える役割を担っているのがサイトカインです。
サイトカインは、構造やはたらきによって様々な種類があり、その中にTNF-α(腫瘍壊死因子α)やIL-12(インターロイキン12)、IL-23(インターロイキン23)、IL-17(インターロイキン17)があります。いずれも免疫機能にかかわる重要なサイトカインですが、過剰に増えることで炎症などが起きてしまいます。
これらのサイトカインは乾癬の症状と関係していることが明らかになっています。何らかの原因によってTNF-αやIL-12、IL-23、IL-17が過剰に増え、乾癬の症状を引き起こすのです。そこで、これらのサイトカインをターゲットにした生物学的製剤が乾癬治療に用いられるようになりました。
乾癬治療に用いる「生物学的製剤」
現在、乾癬に対して、日本で用いることのできる生物学的製剤は数種類あり、投与方法や間隔など、より患者さんのライフスタイルにあった薬剤を選択できるようになりました。生物学的製剤の選択に当たっては、ご自身の状況について、主治医にお伝えください。いずれも乾癬に関わるサイトカイン(TNF-α、IL-12、IL-23、IL-17)の働きを弱めることで治療効果を発揮します。